中村時広

昭和35年1月25日生まれ
趣味/読書、スキー、バドミントン
尊敬する人/福沢諭吉
座右の銘/至誠通天

【中村時広事務所】

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時の風 中村時広がお届けする発行紙「時の風」

1998年1月号 市場からのメッセージ

見向きもされない選挙

昨年後半、各政党代表選出の選挙が相次いで行われた。

12月末に某新聞社が実施した世論調査によれば、無党派層は51.6%と再び5割を超えている状況にあるため、こうした選挙に国民の関心が向けられるはずもないが、見方によれば、それらは各政党の抱えている問題を浮き彫りにしている。

自民党の場合は、橋本総裁が無投票で再選を果たした。

その後の展開を見れば明らかなように、所属議員が同氏の政策・理念に共鳴したわけでもない。

その時点では、まだある程度の支持率を得ていたことによる利用価値、党内二大勢力のバランスの上に成り立っている中立的立場、本人が党内に確固たる勢力を持っていないため、実力者から見れば使いやすいと言った次元でその結果がもたらされた。

その証拠に、総裁よりも党の役員人事のほうが問題になると言う奇妙な姿が展開された。

利権集団政党の面目躍如と言ったところだろうか。


いつのまに?

民主党の場合は、結党以来、鳩山・管、両氏による2人代表制という不思議な体制を続けていた。

それは2人の個人的人気に頼る体質の象徴でもあったのであるが、組織的には無理であり、限界がきていた。

そこで、どちらがより国民的人気を、と言う尺度がモノを言い、所属議員は管氏を選出、亀裂は好ましくないとのムードの中、話し合いにより選挙は回避した。確か民主党のスタートは、鳩山新党ではなかっただろうか?
いつのまにか主役が変わってしまった。


最後の正念場

新進党の場合は、かねてからの党内対立ムードが、選挙時に一気に表面化した。

その根底は、自民党に対抗しうる政治勢力を結集すると言う結党時の路線を行くのか、
自民党の一部と手を組むことが高度な政治戦略と考えるのか、と言う路線問題であろう。

新進党の結党時の趣旨から言えば、後者の論理には無理がある。

その考えを元に、私は鹿野道彦氏に投票したが、残念ながら借敗した。

年明け後、新しい執行部はどのように運営の舵を取って行くのか、それにより、早い時期に党の将来が決まる。


どちらにいっても

社民党は自民党と連立を組むことで、自己否定の日々をすごしつづけている。

選挙のことを考えると、野党路線でかつての勢いをと言う考え方も党内にはあるようあるが、展望が開ける確信もない。

告示された党首選挙には、立候補の届け出が出ないと言う前代未聞の状態となった。

この原稿を書いている時点でけっかはでていないが、土井だかこ氏以外に党首候補は見当たらない。

最終的にはそこに落ち着き、参議院選挙前には与党離脱と言う方向に向かう可能性が高い。


市場からのメッセージ

さて、このような権力闘争が政治の舞台で繰り広げられる一方で、経済情勢は悪化の一途をめぐっている。

政府は小手先の政策を小出しに打ち出すものの、市場はほとんど反応しない。

逆に言えば、株価や円相場の動きは、日本の政治に対する市場からのメッセージである。

「時の風」3月号で特集させていただいたとおり、時代は好むと好まざるとに関わらず、市場の時代に向かって進んでいる。

かつては、モノや通貨の価値は、誰もが共有する数字、例えば受給バランスや国の経済指数で決定されていた。

しかしながら市場が複雑になり、先物市場が拡大するにつれ、マーケットは目先のデーターだけでは動かなくなってきている。

現在、日本のシステムそのものに対する不信感が、世界の市場に拡大している。

だから、小手先の対策を打ち出したところで、市場が反応するはずもない。

システムそのものに、メスを入れる行動を起こすか否かを見つめているのだ。


信頼の分岐点

その意味で、「郵政民営化」が一つのターニングポイントであったことは間違いない。

橋本首相の「火だるまになってでも行政改革を進める」と言う決意は、それなりに評価されていた。

だからこそ、市場は日本のシステムの根本改革に繋がる郵政民営化問題に、どのような結論を出すかを注目していたのである。

しかしながら、族議員と関係団体の強烈な圧力の前に、あっさりと白旗を掲げ、国営維持が決定した。

これ以降、市場の政府に対する信頼、期待は失墜したと言って良いだろう。

現政権では、日本は変われないと言う判断である。

郵政民営化の問題は、単にその事業への民間事業参入が可能となり、競争が進むと言うことにとどまる話ではない。

そこに集まる莫大なお金(郵便貯金だけで230兆円)が、大蔵省を経由して、天下りなどで問題となっている特殊法人や公団へタレ流されていることが最大の問題である。

その仕組みがあるからこそ、極端に言えば、各団体は安心して赤字が出せるのである。

民営化によって、この資金ルートがたたれれば、一気に根っこにある問題を表面化させることも可能であったし、
各団体も自ずから健全な運営に向けた努力を迫られることになったであろう。

行政改革の根本に関わるテーマだったのである。


未来にふた

民営化にすれば、不採算な地域の郵便ポストがなくなると言う論がまかり通った。

今でも民間の宅配便は、全国隅々まで配達をしている。

仮にそのような事態が起こるならば、その時こそ、いい意味での補助金を活用すればよいのではないか。

また、民営化は郵政事業関係者にとって、絶好のビジネス拡大チャンスであった。

融資事業と言う新たな分野が追加され、ネットワークを駆使した新ビジネスがいくらでも展開可能となる。

そうした前向きな話は、幹部の口からは一切出てこない。

未来に向かって積極的になるよりも、既得権を守ることが優先されたのである。

集まったお金は自主運用すると言うことであるが、官僚の手から離れるわけではない。

管理者が大蔵省から郵政省に移るだけの話である。そうしたごまかしは市場には通じない。

この問題は数年後、今よりも状況が厳しくなった状態のときに、市場の圧力により、再び俎上に上るであろう。

その時に、郵政事業関係者は、あの時にもっと早くてを打っておけば良かった、と言う思いを持つことになる。


そりゃ無理だ

金融問題もしかりである。昨年、金融不安解消を目的に、政府は10兆円の公的支援を決定した。

世論を気にして、言葉遊びに新家を使っている様子が伝わってくる。なぜ税金投入と素直に言わないのであろうか。

この方法では、市場は一時的な反応しか示さないだろう。

市場が根本的に求めているのは、透明なルールだからである。

今回の仕組みは、住専への税金投入のやり方と本質的に変わりない。

大蔵省の手の中ですべてを決定し、経営責任や行政責任をあいまいにしてしまう結果になるからである。

不良債権の正確な情報を明らかにし、責任問題をハッキリさせ、
その上で税金投入と言う道筋を書かない限り市場の不信感は消え去ることなく、日本売りは続いていく。


まだまだ強いのに

日本の経済はまだまだ体力がある。製造業の総合力、それを支える中小企業の技術力など、世界有数のハイテク国家である立場に揺らぎなはい。

その体力がある間に、市場の時代に立ち向かえる体制を整えられるかどうかが問われている。

まだまだ悲観的になる状況ではないのである。

そこに旧来型の政治が立ちはだかる。政治が健全な体を蝕んで行くのだ。

本誌でも、繰り返し述べさせて頂いてきたが、過去のしがらみと癒着が、思い切った方向転換を拒むのである。

過剰な規制や税制を持つ地域は、市場から拒絶されてしまう。

だからと言って、何でも自由にすればよいというものではない。

弱者や安全、環境などへの配慮など、必要な規制もあるのだ。
それまでも、市場は否定するものではない。

問題はそれがなぜ必要なのか、市場の参加者に納得のゆく説明ができるか否かにある。

不透明な存在理由は受け入れられないと言うことである。

掛け離れた感覚

考えてみると国会議員には、民間ビジネスマンや市場プレーヤーとしての経験者がほとんどいない。

7割以上が官僚、地方議員、純粋2政、秘書出身者で占められている。

机上の計算に炊け、難しい言葉を駆使し、ソツなく振る舞う頭脳や、権某術数に秀でた能力は、市場には通用しない。

市場のメインプレーヤーは、20歳代後半から40歳代の若手である。

その連中が、モノや通貨の価値を決めて、日夜売買を繰り返しているのだ。

商社マン時代、世界から分刻みで届けられるニュースを分析し、チームが一丸となってモノの売買を行っていたことを思い出す。

確かな情報だけを読み取り、先を読み、時間と戦うのである。だから、小手先の政策をいくら提示しようが、市場は反応しないのである。

自分自身もこの充電期間に、商社時代の感覚を取り戻しておかなければならないことを痛感する。


原点の確認

市場のメッセージは明らかに現在の政権に対し、ノーの要求を突き付けている。

しかし、たとえ政権が変わろうとも、昨年の各党代表選出の選挙を振り返る限り、トップが替わることによって、あるいは今の枠の組み替えによって、時代の要求に答えられる政権が誕生する状況にあるのか、疑問を感じることがある。

今年はその原点を、徹底的に見つめ直してゆきたいと思う。