中村時広

昭和35年1月25日生まれ
趣味/読書、スキー、バドミントン
尊敬する人/福沢諭吉
座右の銘/至誠通天

【中村時広事務所】

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時の風 中村時広がお届けする発行紙「時の風」

1997年10月号 中国・台湾見分録 (中国編)

いざ大陸へ

台湾を後にして、今度は中国へと向かう。距離的に考えれば、香港経由、ソウル経由がベストであるが、荷物の問題もあったため、一旦関西空港に戻る。余分な荷物は松山に送り返し、ジーンズ一本、スニーカー一足、紙袋一つといういで立ちで、翌日の便で北京へと向かった。
広大な土地、12億の人民、共産主義、文化大革命、天安門事件などなど、向かう機中でさまざまなイメージが頭をよぎる。三国志、項羽と劉邦、大地の子、ワイルドスワンなど大陸を舞台にした壮大なスケールの小説のストーリーが、記憶によみがえる。
台湾の対局にある中国の現状は、いかなるものへと変貌しつつあるのであろうか、好奇心に支配され、若干の興奮を感じているうちに、機窓に大陸が見えてきた。

生の姿を知るために

北京空港の出口には、商社時代の先輩が迎えにきてくれていた。先輩は十数年前に会社を退職し、中国に単身乗り込み、企業を起こした。一度は挫折を経験するも、持ち前のバイタリティーで6年前に新たに創業、現在は業績も順調に推移し、千人の従業員を抱える会社の社長として、多忙を極めている。
中国では政府関係者などと会っても、本音の話を聞き出すことは至難のワザだ。和やかなムードの中で、日中友好乾杯の宴に参加して、ハイ終わりが関の山である。こうした光景は、通常の民間交流でもそう変わりはしないだろう。
だからこそ、個人でビジネスのすべてを切り開き、挫折も経験し、現在も最前線で活躍を続けている先輩に会うことが、生の中国を知る早道ではないかと考えた。そして、中国を後にする時、そのアプローチが大正解であったことをつくづく知ることになる。

くじかれる出鼻

「朱に交われば赤となる」ではないが、8年ぶりに再開した先輩が、中国人のような雰囲気を、自然に漂わせるようになっていたのが印象深い。
空港から出ると、まずはホテルの喫茶店で2人でコーヒーを飲みながら、先輩が肌で感じ取ってきた中国の話を聞くことにした。
先輩の最初のメッセージは、

「上に政策あれば、下に対策あり」
表・裏の激しい社会ということを端的に表した言葉である。

第二のメッセージは、
「お前が持っている過去の中国感を捨て去ればそれが今の中国」
あれあれ、随分と様子が違ってきたぞ?

第三のメッセージは、
「共産党と自民党を置き換えろ」
え、そんなに腐敗しているの?

もう一つの顔

こうした中国の実態を知らずに、表向きの友好的な空気だけでビジネスの門をたたくと、必ず失敗する。現在、数多くの日本の資本が合弁企業という形態で大陸に進出しているが、将来的な予想では、効率は10%程度、さらに10%が可もなく不可もなくで存続、残りの80%が縮小、撤退を余儀なくされて行くと予想する。
大半の役人もビジネスマンも、表向きの顔とは別に、「ところで」というももう一つの顔を持っている。時にはそれが、「ウソつき」や「ワイロ要求」という姿で表れる。
日本の物差しで考えればとんでもないことであるが、騙されるほうが悪い、ワイロは商習慣の一部などという価値観が根底に流れていれば、ことの善悪の判断も変わってしまう。
実際に先輩が手がけた最初の仕事においては、人の良さそうな相手方が、ある日突然個人的に「車」を要求することなど、日常茶飯事であったそうだ。
先輩の会社で社員の募集をかけると、多くの若者たちが採用試験に殺到する。10人に1人ぐらいは、磨けば光る原石がいるそうである。しかし大半は橋にも棒にもかからない。5人に1人は偽造した大学卒業証明書を携え、入手手段のわからない証明書も数多い。先生がアルバイトで、200元(2000円)程度の相場で発行しているケースもあるそうだ。
あまりに立派な履歴書の文字を見て、自分の署名をその場で書かせてみれば、似ても似つかぬ文字、それでも彼らは言い張るのだ。「履歴書は自分で書いた」

あふれる活気

中国の都市部には活気がみなぎっている。市場経済、外貨導入などの積極策が功を奏し、経済成長率は年間16%をたたき出す。工場、高層ビル、弾丸道路が凄まじい勢いで建設されてゆく。夜にはネオンが煌々と輝き、ディスコやハードロックカフェに若者が集う。個人所得も確実に上昇を続け、車、携帯電話などの普及も目覚ましい。初任給は外資系企業で平均800元(12000円)、国営企業で平均500元(7500円)の水準である。
その中で、一般の人がどの程度の日常生活を送っているのかを少しでも知るために、先輩から若い中国人を紹介して頂いて、日常生活通りの買い物に同行させてもらった。

庶民の台所事情

夕食の材料を買うために、まずは青物市場へいく。倉庫の両サイドに、個人商店が立ち並ぶ。品物は豊富だ。野菜と名のつくものはほとんど並べられている。当然のことながら、日本人など誰一人いやしない。キャベツ、キュウリ、トマト、大根などを袋2つに詰め込んで、さて、丸ごとハウマッチ?日本円で約80円である。ただ、果物は若干高めで5人分程度で約300円といったところであった。
お次は食肉市場へいき、肉を買う。ここは青空市場、道の両サイドに個人商店が立ち並ぶ、入り口では、上半身裸のオヤジが生きた鶏の首を包丁でぶった切る。さばく以前のブタ、牛、鳥の肉塊が、それぞれの商店にぶら下がる。売買の単位は一斤(500g)、豪快である。
肉にハエがたかっていたので指摘すると、「ハエもたからない肉は、まずくて食えない」などと言う。思わずなるほど、
とうなずいてしまった。一番高い豚のヒレ肉一斤が、日本円で約120円であった。この2つのショッピングを通じて、食生活の豊かさ、安さを肌で実感させてもらった。

刺激される欲望

道すがら、日常生活に対する話をたずねてみた。住居については、数年前までは国が無料支給していたそうだが、今は自己責任で確保しなければならず、若い人達の悩みの種となっている。ちなみに住宅の値段は、北京郊外・50uで約10万元(150万円)、中心高級住宅街・50uで約50万元(750万円)といったところだそうだ。
北京の若者の一番欲しい者は車である。ただし、これは高い。日本のダイハツシャレードが7万8千元(120万円)、
フォルクスワーゲンのサンタナが26万元(390万円)で、日本とあまり変わらない。
これらのことを通じて、日常普通に生活するには、現在の所得水準でも十分であるが、次から次へと繰り出される豊かな商品が購買意欲を刺激し、拝金主義がはびこると言う社会構造が見えてきた。極端な言い方をすれば、日本以上に資本主義が、中国社会に根を降ろし始めているといえよう。
天安門事件前後までの中国しか知らない人にとっては、実際に見なければ、その変貌ぶりを信じることはできないだろう。政治における共産主義と、経済における資本主義という人類初の試みは、一見成功しているようにも見える。

成長の裏側で

しかしながら、そうした急激な物質的繁栄の裏側で、新たな問題も噴出している。著しいモラルの低下、都市部と農村部の経済格差の拡大、環境汚染問題などである。
交通違反も交渉次第で、いかようにもなることがある。
人民解放軍は、豊富な武器を材料に、観光客向けの射撃場を兵舎の中に構える。
17%の消費税があっても払わない。一般の商売では伝票も領収書も何もないため、補足も出来ないのだ。今年の前半、消費税の9%還付を政府が発表するや、収入以上の請求が舞い込んできたそうだ。
全国に800社あるバイク製造会社は、売るために勝手にホンダのネームプレートをつけている。故障した場合、ホンダには社名のついた見たこともないバイクが持ち込まれる。

新たな問題

かつては政府の出先機関は、人民のために外国企業と交渉する役割を担っていたが。しかし現在は出先機関のファミリーかが進み、利権をめぐって人民とぶつかり合う。その点においては中国の共産党と日本の自民党に違いはない。
また、地方分権は以外に進んでいる。
出先機関のレベルで利権システムが構築され、都市部を抱える地域はその利益を外に出さないよう工夫するからだ。これにより、中央政府の役割が少しづつ弱まっており、その一方で、地域間格差が増大している。
また、工場の乱立と自動車の急速な普及は、人口が多いだけに、やがて地球規模の環境問題を引き起こすことは必至である。その結果として日本には大量の酸性雨が降り注ぐことになる可能性もあろう。