中村時広

昭和35年1月25日生まれ
趣味/読書、スキー、バドミントン
尊敬する人/福沢諭吉
座右の銘/至誠通天

【中村時広事務所】

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DJ中村時広 FM愛媛/えひめ・熱中・夢中人! 南海放送ラジオ/おーい中村さん!

 感動物語「競馬ごっこ」

 今週も先週に続きまして愛媛県の昨年度に実施した事業、「愛顔感動ものがたり」の入選作朗読をお送り致します。 この事業では、人それぞれの人生における愛顔に繋がる感動的なエピソードを、800字以内の文章で募集しました。 新井満さん、紺野美沙子さん、水城奈々さんらの協力を得て、今年1月に表彰式を実施、会場を埋め尽くした県民の皆さんを感動の世界へ誘うこととなり、事業の継続が決定、今年も7月末まで作品を募集中です。
 今回で10作目となりますが、最後にお届けするのは東京都の奥田益也さんの作品「競馬ごっこ」です。お聞き下さい。
 四十年連れ添った妻に急逝されてからは生きる張り合いをなくし、まったくの無気力状態になってしまった。家にひきこもり滅多に外出もしなくなった。  だが、日がな妻の遺影を見ているうちに、このままでは人間が駄目になると思い、犬の散歩に出るようになった。 生前の妻に任せきりだった老犬は、ためらうようにしながらもよたよたと後からついてきた。
 夏は朝六時に家を出た。老犬の歩くペースは歯痒いくらいに遅い。じきに老老介護になるかもな=B妻に冗談をつぶやき、笑ったりもした。 そうでもしないと寂しさに押しつぶされそうになった。
 そんなとき、近くの団地の前庭に屯ろする老人の一団を見るようになった。 チラっと横目で見ると、競馬新聞を手に、「ホラ、大当たりだろ」「あーあ、ボロ負けだ」と、ワイワイ騒いでいる。 朝っぱらから競馬とはイイ気なもんだ°黶Xしい思いで何度かやり過ごしたあと、その中の一人が声をかけてきた。 一瞬まずいな≠ニ思いながら立ち止まると、老人は新聞をひらひらさせながら言った。  「お宅の奥さんもそのワンちゃん休ませて、これやったことあったよ」  エッ!女房が競馬?まさか  「なに、馬券買うんじゃなくて、勝ち馬の当てっこして駄菓子のやりとりするだけの話。お宅の奥さん、勘だけを頼りに勝ち逃げするのが上手かったよなあ」
 言われてみれば、「これいただき物よ」と煎餅や飴玉をゾロッと出したことが何度かあったっけ。 老人たちに混じり競馬ごっこに夢中になっている姿が目に浮かび、思わず声を立てて笑ってしまった。老人たちも笑った。
 「この歳になって友だちが沢山できたよ。君がいないのは寂しいが、生きてはいけるよ」 妻の遺影に、そう語りかけるようになった。