中村時広

昭和35年1月25日生まれ
趣味/読書、スキー、バドミントン
尊敬する人/福沢諭吉
座右の銘/至誠通天

【中村時広事務所】

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DJ中村時広 FM愛媛/えひめ・熱中・夢中人! 南海放送ラジオ/おーい中村さん!

 感動物語「不器用な母のおもい」

 今週も先週に続きまして愛媛県の昨年度に実施した事業、「愛顔感動ものがたり」の入選作朗読をお送り致します。 この事業では、人それぞれの人生における愛顔に繋がる感動的なエピソードを、800字以内の文章で募集しました。新井満さん、紺野美沙子さん、水城奈々さんらの協力を得て、今年1月に表彰式を実施、会場を埋め尽くした県民の皆さんを感動の世界へ誘うこととなり、事業の継続が決定、今年も7月末まで作品を募集中です。
 それでは今週は、高知県のやのひろみつさんの作品「不器用な母のおもい」をお届けします。お聞き下さい。
 私は小学校に入り近所のお兄ちゃんの影響で剣道の道場に通い出した。剣道は想像以上に厳しかった。冬寒くて夏暑い。 冬は素足で道場に立っているだけで凍り付きそうだった。本当は剣道をやめたかった。 でも、母は何事も始めたら途中でやめる事を許さない人だった。だから、黙って剣道を続けた。
 上級生になって、ようやく試合に出るようになった。友達の親はいつも試合に応援に来るが、うちの母は一度も会場に姿を現さなかった。 試合後に家族で広げたお弁当がこの上なく美味しそうだった。友人の母は私を気遣ってお弁当を作ってくれた。私は試合で入賞したことがなかった。 不器用だった。努力はしているが結果に結びつかない。これはきっと母ゆずりだ!子どもの私から見ても、母は要領が悪く不器用だった。 「人はね、真面目に一つのことを続けることが大事なの」母の口癖だった。
 ある時、奇蹟が起こった。なんと市の大会で三位に入賞したのだ。初めて貰った賞状とメダル。早く母に見せたくて、防具を自転車にくくって家路を急ぐ。 この坂を登りきれば家までは下り坂。ペダルに力を込めた。母は喜んでくれるだろうか。そんなことを考えたら涙が溢れて前が見えなくなった。
 「ただいま」近づいてくる足音。「何してるの、早く入んなさい」母の声。おずおずと賞状を差し出すと、母の目はみるみる涙で一杯に。 「涙って飛ぶんだね」私の口から出た一言は、思いがけずこんな言葉だった。親子は玄関の前でしばらく泣いた。再び防具をつけて写真撮影会が始まった。 こんなにはしゃぐ母の姿は初めてだった。
 母よ、実はこっそり試合を見に来ていたのですね。緊張しいの私があなたの姿を見たら余計に緊張すると思ったんですね。 友人がくれたお弁当もわざわざ届けてくれていたんですね。すべて、あとから知りました。 親になり初めて不器用なあなたの「おもい」がわかる気がします。だって、私は不器用なあなたの「不器用な息子」ですから。