中村時広

昭和35年1月25日生まれ
趣味/読書、スキー、バドミントン
尊敬する人/福沢諭吉
座右の銘/至誠通天

【中村時広事務所】

〒790-0801
松山市歩行町2丁目1-6
ウインドパレス歩行町1階
Tel. 089-943-8800
FAX. 089-947-8000







HOME > ダイアリー

ダイアリー

2002年9月 「水問題 」

 松山市の年間平均降雨量は、全国平均約1700oに対して約1300oと大幅に少ないのですが、特に今年度は6月の降雨量が平年比70%、7月同43%、8月同24%と、平成6年の大渇水を思い起こさせるような雨の恵みの少ない天候が続いています。
 過去を教訓とした早めの対応や、市民の皆さんの節水協力を頂く中で、時間断水だけは避ける中で乗り切れるよう全力を尽くして参ります。
 そこでこの機会に松山市の水事情を直接お知らせし、皆さんと一緒に松山市の水問題を考えてゆくことができればと思います。

 昭和30年代前半、松山市の人口は23万人程度でありました。当時の方々は本市の将来人口増加をピーク時37〜38万人と予測、それに基づいて水源対策を進めて建設されたのが石手川ダムで、現在のダム50%、地下水50%という供給体制が築き上げられました。しかしながら人口は予想に反して大幅に増加、今日の水不足へと?がっています。
 水には上水、農業用水、工業用水という厳格な区分が存在しており、私も市長として直接現場を知るまでは、これほどまでに難しい問題とは思っておりませんでした。放流している水があるのに何故使えないのか、そう感じる市民の方も多いと思いますが、それぞれの水利権というものが障壁となり、多くの矛盾をもたらしているのです。これは全国一律の問題でもあります。しかも水利権は県内だけの問題ではなく、水系によっては他県の水利権が関わって参りますので一筋縄ではいきません。
 そのような中で10年前、実現性・コスト・水量という総合評価でベストと判断し、実現を目指してきたのが山鳥坂ダム中予分水事業でした。しかしながら水を頂く側と出す側では当然立場は異なり、交渉は8年間に渡って暗礁に乗り上げ、月日だけが経過するという悪循環に陥っていたのです。
 市長に就任した当時、できるかできないかは別として、問題の先送りからは何も生まれないという判断で取り組み始めましたが、幸いなことに加戸守行愛媛県知事も「膠着状態は最悪の選択」という同じ考えを持たれていましたので、知事の働きかけがきっかけとなり、初めて分水事業が具体的な話し合いのテーブルに乗ることとなりました。
 水問題の交渉は極めてデリケートで、一つ一つの言葉にも注意をしなければならず、水利権の絡んだ交渉の難しさを痛感いたしました。そして交渉過程の中で、事業主体である国から見直し計画が提出されたのですが、肱川流域の意向を最大限に取り入れる内容でしたので、必然的にそのシワ寄せが中予地域に掛かって参りました。
 当初計画と比べて中予地域は取水量が減り、負担は増えるという大変厳しい内容となり、中予地域としては「当初計画はベスト、見直し計画は困難」という基本姿勢を堅持することで一致、両者の溝は埋まらずに昨年10月、国の判断により中予分水事業中止という結末を迎えることとなりました。
 当初計画が実現できなかったことは残念ですが、結論が出されたことを受けて袋小路からは脱出、他の手法を自由に検討できる立場に立つこととなったとも言えます。
 そこでまず、市といたしまして短期的、中期的、長期的に政策を区分し、基本的な考え方を固めさせて頂きました。

 短期的には中予3市5町の間で助け合うというシステムづくりです。これにも水利権の壁が存在するのですが、この4月に「異常渇水の緊急時に、人道的な見地から」という条件の下に関係自治体で協定を結ぶことができました。
 これはあくまでも緊急対策であり、抜本的な解決策ではありませんが、中予各地域それぞれのセーフティーネットとしては重要な意味を持つと思います。

 中期的には節水とつなぎ水源の確保です。正直申し上げますと、予算に糸目をつけなければ3年程度で解決する方法はあります。しかしながら、水対策はすべてコストが伴い、市民の皆さんの水道料金に直結しますので、可能な限り低コストでというもうひとつの目標も追求しなければなりません。例えば海水淡水化は現実的ではありますが、莫大な施設建設費、漁業補償、環境問題などを考えると最後の手段にすべきだと思います。
 実は節水も水源対策となります。しかも最も安く、最も即効性のある水源対策、これを徹底的に追求することによって、コストの高い新規水源必要量を減らしていくことが、結局のところ市民の皆さんの負担を軽くすることにつながります。その間は皆さんからみれば、「他に方法はないのか」というご批判を頂くかもしれませんが、将来の水道料金という観点から、その価値をご理解願えればと思います。
 現在松山市では節水につながる家庭用機器に対して、補助制度を創設しています。「風呂水給水ポンプ付き節水型洗濯機」「シングルレバー式湯水混合水栓」「家庭用バスポンプ」「雨水タンク」などは既にご利用頂いておりますが、11月からは節水効果の高い「食器洗い乾燥器」も全国で初めてメニューに追加致しますので是非ご利用頂ければと思います。またこれとは別に「節水ゴマ」は無料配布しております。
 更には節水を促す、節水の努力が実感できる料金体系も考えねばなりません。「節水をしたら、何故単価が上がるのか」というご批判の声も当然あると思われます。しかしながら節水が進めば当然料金収入は減少、その一方で施設の維持費や更新は続きますので、これは避けて通れない話なのです。市には「打ち出の小槌」はありません。水対策はいかなる手を打とうともコストがかかります。節水も同様です。しかし繰り返しになりますが、その中で最も安い手法が節水であることは間違いありません。
 ここで問題になるのは値上げをしなかった場合、どうなるかということです。収入源の穴は空いていますから、結局皆さんの税を財源にした一般会計で補填することになります。すなわち料金で徴収するか、税を当てるかの違いがあるだけで、市民負担には変わりありません。むしろ一般会計を振り向けることは、見かけ上の値上げが表面化しないため、その場の耳障りはいいかもしれませんが、使った人、使っていない人に関係なく負担をすることになってしまう公平性の問題、実質の市民負担が水面下に隠れてしまい、結果として節水意識の高揚に逆行するなど、個人的には問題が多いと思います。
 こうした点から考えて、節水の努力が報われる、あるいは節水のインセンティブになりえる料金体系のあり方も検討する必要があると思います。
 一つの例ですが、月100円のものを10使えば月額1000円、単価を一割アップして使用量を1割減らした場合、月110円のものを9使うことになりますので月額990円、すなわち水の負担は単価よりも月額料金で考えるような意識が市民の皆さんの間に生まれれば、いろいろな考え方ができるのではないかと思っています。
 市民の皆さんの水問題に対する関心が拡大することを、市長として心から期待しています。
 更には水需要が集中し、渇水の危険が高まる時期だけに適用する、期間限定の料金制度も一考に値するのではと思います。もちろん料金を改訂する前提として、経営の効率化は絶対条件ですので、現在民間委託や人員削減など、公営企業の合理化に徹底的に取り組む準備を進めています。
 また、恒常的には使いませんが、いざという時のつなぎ水源を確保(予備水源ですので水道料金には反映しません)するということで、2年前から水脈調査を行ってきた地下約130メートルに存在する深井戸の開発を行います。
 平成6年には5時間の給水制限を余儀なくされましたが、この3年間でできる限りの井戸を開発しましたので、現在は同じ状況下でも8時間給水が可能です。更にこれらの対策により、11時間給水までの対応が実現します。
 同時に議会とも相談しながら、今年度末までに節水条例を制定、一定規模の建物を新設する場合には、雨水や下水道再利用などの循環システム設置を義務付ける体制をとる道を模索してゆきたいと考えています。

 長期的にはこうしたステップを踏まえた上で、極力コストの高い新規水源依存量を減らし、その量を確定、様々な可能性を追求してゆきます。
 現段階でも幾つかのチャレンジできそうな案がありますが、最初に申し上げました通り水利権などが微妙に絡んで参りますので、皆さんからは詳細が見えにくいかもしれませんが、この課題は国や県のお力もお借りしながら慎重に粘り強く進めてゆく必要があると思っています。

 以上大まかな水を巡る松山市の状況を説明させて頂きましたが、ご参考願えれば幸いです。